高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

お知らせ

ためしに http://ep-25.tumblr.com/tagged/%E6%84%9F%E6%83%B3 のほうに移動してみていますよ。

貫成人『カント―わたしはなにを望みうるのか:批判哲学』

二冊は読むべきだな。やはり読みやすいと感じた。「入門・哲学者シリーズ」は内容も多すぎず平易に解説されてて、素人にはありがたいなあー。あとこのWordで描いたみたいな図もいい。 カントは有名な『~批判』の三書で、それぞれ真・善・美を説いた。わたし…

panpanya『足摺り水族館』

うーんなんで買ったのか憶えていないんだけど、よかった。鉛筆とペン、デフォルメと写実と、いろんな絵が混ざってコラージュのようで、なんだか現実ばなれしているし、人間同士の交渉が異様に少なく、暗く静かな世界でありながら、全体的にあっけらかんとし…

吉浦康裕『サカサマのパテマ』

どこかで予告編を見たのか、テレビCMをやってたのか。気にはなっていて、Google Playで名前を見かけたのをきっかけに観てみた。物語はシンプルで、二つの世界の男の子と女の子がであうボーイミーツガールであり、悪をくじき、世界を発見する冒険なのだけど、…

イサベル・アジェンデ『精霊たちの家』

祖母から孫娘にわたる女系三代の物語。なるほど『赤朽葉家』はこれに通じるところがあると言ってよいと思う。ともかく、まず目次を読むと、「美女ローサ」からはじまり「陰謀」「恐怖」「真実の時」……と後半に不穏な空気を抱えていることがわかる。といって…

石川文康『カント入門』

2014年に読んだ本。 世界は(時間的・空間的に)無限か有限か? という問題を取りあげてみる。具体的な議論は興味ないので省略するけど、決着がつかないのは想像すればわかると思う。実際のところ、世界は有限でも無限でもない。世界は空間や時間という尺度…

桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』

ずっと前にKindleで買っていて、案外読むのに難儀したので、ときどき気が向いたときに読み進めてた。どこで知ったのか覚えてないが『百年の孤独』の近現代日本版じゃろ? との予断をもって読みはじめ、たしかにその趣があったけど、しかしときどき時代を語る…

清水マリコ『嘘つきは妹にしておく』

これもほんとは正月休みに読んだ本。物語の妖精みたいのが登場する、おはなしのおはなしなんだけれど、なんか消化不良だなーと思ったのは、作中作がそうである必然性を認められなかったからだろうな……。おれにとってこの本がもっとも良かったのはこの作中作…

ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』

年の終わりと新年一発目だけはなんとなくこれと決めて読むものだ。 心理学者がナチの強制収容所に送られたときの、その体験と記録を本にしたもの。細かい章に分かれたエピソードたちはなにかストーリーを描くわけではないけれど。悲惨さをまざまざと描くわけ…

2014年をよかったasinで振り返る

年末恒例、何度目だっけ(参考)。今年はなんだか忙しかったのか、俺の精神的には何もカルチベートされなかった一年だったな、てのが悲しい。信じられない思いだ。今年は50冊も読んでないだろうし不完全燃焼と呼ぶしかない、来年こそはという気分である。時…

レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』

最近全然書いてなかったけど別に読んでなかったわけではないのだ。とりあえず下書きになってたやつを卸してくけど、年末までに読んだ分全部書き出せない気がする。 で、これ。満足感があった……。ハードボイルド。かっこいいかどうかは分からないけれど。ミス…

三島芳治『レストー夫人』

ひっっさしぶりに漫画でとてもよいと思えるものを読んだと思う。Kindle版が配信される前にこれは絶対いいと思って予約していたやつだが、案の定よかった。 なぜだかは語られないが高校二年生になるとそれぞれのクラスが『レストー夫人』なる劇を上演すること…

『停電の夜に』

古本屋で見かけ、聞いたことのある名前であったので購入する。どうも以前から、新潮クレスト・ブックスって大人の女性を対象にした(ちょっとハイソな)レーベル、という印象があって、なんとなく自分には合わないなと感じてはいたのだけれど、そこには目を…

アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』

タブッキは一冊しか読んだことがないのに夏のイメージが強く植えつけられているなと思った。前に読んだの(『供述によると……』)が実際夏であったし、冒頭の描写も夏だったから、それも不思議はないなと思う。レーベルも同じく白水Uだから、なおさらかな。 …

藤ます『Sweet Lip』

最近この日記を書いてなくて自分でも心配だし久しぶりに書くのがエロ本なのも心配だ。てか最近ゲーム映画エロ本となって脳のカルチャーが破壊されてるなあ……。 では早速レビュー!!!(そういうテンションではない) まず特筆すべきなのはタイトルどおりフ…

ディーン・パリソット(監督)『ギャラクシー・クエスト』

往年のスペースオペラテレビシリーズ「ギャラクシークエスト」(スタートレックをモデルにしてるとおぼしい)は放送終了後も一部に根強い人気をもち、何年も後になってのファンイベントも盛況なのらしかった。しかしその役者たちはファン(つうかオタクだ)…

竜太『ちちにくりん』

Kindleのおかげてエロ本もほんのちょっととはいえサンプルを読めるようになったことは嬉しい。提供されるのが冒頭部分なのでカラーパートとなってしまい大部分を占める白黒のクオリティ判定が微妙にやりづらいのは難点だけど。これは表紙がそんなに好みでは…

『喰霊-零-』

「喰霊-零-」 Blu-ray Special BOX出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/12/27メディア: Blu-rayこの商品を含むブログ (5件) を見る レンタルで。東京に住んでたころに一話を見たきりで、なんとなく気になってたのを思い出したので、少しずつ観てた。 あり…

『Final Fantasy V』

FINAL FANTASY V - Google Play の Android アプリ 電車の中でにーちゃんがファイファンやってるのを見て、どうもやりたくなってしまったのでAndroid版を購入した。FF6はプレイ済みだったので、そのひとつ前のを。 ジョブがたくさんあったけど、なかなか自分…

リシャルト・カプシチンスキ『黒檀』

サントル・ダキエルの欠点を挙げれば、シャワーの数の少ないことで、なんと十部屋にひとつの割合だ。おまけに、数少ないこのシャワーは、いつ見てもひとりのノルウェー人青年に占領されている。この男は、バマコがこんなに猛烈な暑さだとは知らずに来たとい…

わかつきひかる『仏教学校へようこそ』

「仏教の教えはね、『私は幸せ、あなたも幸せ』『私はオッケー、あなたもオッケー』なのよ。私もカラオケで楽しくて、大和も楽しくて、両方オッケーでしょ?」 「自利利他、二利円満っていうんだ」 住職が言葉を添える。 仏教学校へようこそ p.65 折しも『世…

小野寺整『テキスト9』

何かよく分からない仕組みの働く宇宙の人間の危機を救うため、女物理学者が別宇宙へ乗り込む……。(あらすじのつもり) 当然、そこには、カレンの目に映る男優としてのグッドマン(男優体)だけでなく、それを鑑賞している客としてのグッドマン(客体)も登場…

古川日出男『アラビアの夜の種族』

"Arabian Nightbreeds"、無名の著者(有名ではないという意味ではなく、ノークレジット)による作で、それゆえ多くの翻訳者・編集者が自らの名前で好き勝手に改竄を施してきた物語の、日本語訳。だからこれは物語の物語だ。 ナポレオンの邪眼からエジプトを…

福島聡『星屑ニーナ』

3年後! 5年後! いやー、エピックだった! 作者はハチャメチャな漫画を目指したと書いていたけれどその試みは成功しているように思える。それも読者がついていかれないようなハチャメチャさではなく、ハチャメチャさを楽しみながら引っ張っていかれるような…

谷崎潤一郎『鍵・瘋癲老人日記』

こ、これが日本を代表する作家……。『春琴抄』がとてもよかったわけだけど期待に違わぬものであった。 鍵: エロオヤジが淫蕩な性質の妻に負けじと自分を嫉妬させるように仕向けて破滅していく様を描く日記。夫と妻との日記が交互に現れてミステリーのような趣…

殊能将之『黒い仏』

だいぶ前に読んだやつ。文脈は知っていたので展開に驚きはしないしむしろそれを求めて読んだのだけど。ミステリってのは懐の広いジャンルだと思いつつも、消化不良感は否めない。 黒い仏 (講談社文庫)作者: 殊能将之出版社/メーカー: 講談社発売日: 2013/07/…

ジーン・ウルフ『ピース』

ジーン・ウルフの新作! ではなくて1975年のもの……。ウルフってそんなに邦訳されてないらしく、また古いものしか邦訳されてないのだと調べてわかった。 ウルフの作品が何で好きなのかと言うとこの嘘にからめとられるような感じ、技巧上のものじゃなくて語り…

渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ』

自立生活を志向する筋ジストロフィー患者と、その介助をおこなうたくさんのボランティアたちの話。ルポルタージュだね。最近はノンフィクションと言うらしい。Amazonのアカウントを取ってほぼはじめにウィッシュリストに入れた本で、ようやく掘り返してきた…

ジョージ・オーウェル『一九八四年』

一九八四年 (ハヤカワepi文庫)作者: ジョージ・オーウェル,高橋和久出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2012/08/01メディア: Kindle版 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る 最近全然読んでないように見えるんだけどほんとに読んでない。困ったと…

丸山圭三郎『言葉と無意識』

言葉と無意識 (講談社現代新書)作者: 丸山圭三郎出版社/メーカー: 講談社発売日: 1987/10/19メディア: 新書購入: 3人 クリック: 28回この商品を含むブログ (23件) を見る ソシュールの言葉による差異の論理は、自分の考えの中のかなり根元にある重要な話であ…