高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』

最近全然書いてなかったけど別に読んでなかったわけではないのだ。とりあえず下書きになってたやつを卸してくけど、年末までに読んだ分全部書き出せない気がする。

で、これ。満足感があった……。ハードボイルド。かっこいいかどうかは分からないけれど。ミステリのようだけれど謎解きが主ではないから違うのかもしれない。相変わらず何かにつけ暴力をふるう人間たちのプロトコルは理解できないし行動を見ていても想像しづらいのだが。

そして2014年にNHKによってドラマ化されていることがとても魅力的に思える。評判は聞かないけど、ちょっと観てみたい。

三島芳治『レストー夫人』

ひっっさしぶりに漫画でとてもよいと思えるものを読んだと思う。Kindle版が配信される前にこれは絶対いいと思って予約していたやつだが、案の定よかった。

なぜだかは語られないが高校二年生になるとそれぞれのクラスが『レストー夫人』なる劇を上演することになっている学校。そのひとクラスの群像を描く連作短編になっている。

どの話も、演劇という人工的なストーリーを前にして自分を自分自身で語らなければならない少年少女たちの、けっして現実的であったり等身大であったりはしないが、それでも思春期の不安定さと通底するような状況を、不思議に描いている。腹話術の話がいい。

レストー夫人 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

レストー夫人 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

『停電の夜に』

古本屋で見かけ、聞いたことのある名前であったので購入する。どうも以前から、新潮クレスト・ブックスって大人の女性を対象にした(ちょっとハイソな)レーベル、という印象があって、なんとなく自分には合わないなと感じてはいたのだけれど、そこには目をつむって。

読んでみるとうーんたしかに「インド系女性作家」と呼ぶしかない、という気がする。ルーツをインドに持つのはいいんだけどさすがに何編も何編もインドの話をされているのでは食傷してしまう。そういうシチュエーションでなければ書けない機微はあるだろうにはしても、ほとんどにはその必然性を感じないので、結局、作者の存在というか、自意識を感じずにはいられなくて、引っかかるものがある。

単純にストーリーとして読んでも何か余韻のあるだろうことは察せられるが感じることはできず、題材が結婚とか男女の間のことであるなら仕方のないことかもしれない。こんな感じはタカハシマコでも受けた(『乙女ケーキ』)。おれの文章もそうなのだろうと思う。

停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)

停電の夜に (新潮クレスト・ブックス)

アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』

タブッキは一冊しか読んだことがないのに夏のイメージが強く植えつけられているなと思った。前に読んだの(『供述によると……』)が実際夏であったし、冒頭の描写も夏だったから、それも不思議はないなと思う。レーベルも同じく白水Uだから、なおさらかな。

どんな作家であるかは知らないけれど、前に感じたのとおなじ落ち着きをもって語られているように思った。それが心地よかった。ストーリー自体は、もともと小説ですらなく旅行記だと思って手にした本だったので、求めてはいなかったのだけれど、あるようでほとんどなくて、しかし余韻は好きだった。(不用意にセックスでもしていたらおれの中ではポール・オースターになっていたんだが、そうではなくてよかった。)

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

インド夜想曲 (白水Uブックス―海外小説の誘惑)

藤ます『Sweet Lip』

最近この日記を書いてなくて自分でも心配だし久しぶりに書くのがエロ本なのも心配だ。てか最近ゲーム映画エロ本となって脳のカルチャーが破壊されてるなあ……。

では早速レビュー!!!(そういうテンションではない)

まず特筆すべきなのはタイトルどおりフェラチオがフィーチャーされてることだろう。オレ的にはこれでかなり満足できてしまうので、逆に毎度本番に移行するところに不満が残る。各話の後半は飛ばして読んでたよ。あと見落としがちだがラブラブエッチであるのも大変よいポイント。表紙だけ見ると濃そうだけど中身はそれほどでもなく、絵もいい。個人的には以前ネットで見かけて気に入っていたページに出会えたので僥倖であった。

Sweet Lip (メガストアコミックス)

Sweet Lip (メガストアコミックス)

ディーン・パリソット(監督)『ギャラクシー・クエスト』

往年のスペースオペラテレビシリーズ「ギャラクシークエスト」(スタートレックをモデルにしてるとおぼしい)は放送終了後も一部に根強い人気をもち、何年も後になってのファンイベントも盛況なのらしかった。しかしその役者たちはファン(つうかオタクだ)の熱狂ぶりにも関わらず冷め切っていて、自分たちの仕事にも誇りを持てていない様子。ここまではなんとなく知っていたんだけど、この先の展開を全く知らなかったので、主人公たちが本当の宇宙戦争に巻きこまれたのには驚いた。ウソを知らない宇宙人たちは「ギャラクシークエスト」を歴史的ドキュメンタリーだと信じ込み、それに従うように科学技術を発展させてきたのだ。なので主人公たちが昔の演技のとおりに操縦すれば、機械はそれでいい感じに働いてくれるのが面白い。

あとは予想に違わず、彼ら偽物の宇宙の戦士たちが、本当の誇りと勇気を手に入れる話な訳なんだけれど、そういうお約束が楽しい。皮肉屋の男が、それでもずっと嫌っているトカゲ・ヘッドのカツラを外さなかったのがよかった。

ギャラクシー★クエスト [DVD]

ギャラクシー★クエスト [DVD]

竜太『ちちにくりん』

Kindleのおかげてエロ本もほんのちょっととはいえサンプルを読めるようになったことは嬉しい。提供されるのが冒頭部分なのでカラーパートとなってしまい大部分を占める白黒のクオリティ判定が微妙にやりづらいのは難点だけど。これは表紙がそんなに好みではなかったのであまり期待しなかったが女の子(ではなくおばさん)が可愛かったので購入した。腰回りの肉の量感があるのと、またパンツを脱がせない嗜好があるらしくそれがとても良かった。

『喰霊-零-』

レンタルで。東京に住んでたころに一話を見たきりで、なんとなく気になってたのを思い出したので、少しずつ観てた。

ありきたりな感想だが構成がよかったね。一話二話、三話と観て、おれは原作も読んでいないし、その他の情報も耳に入れていないから、一体どうなってしまうんだろうとハラハラしていたが、ああこの娘は殺しすぎたのだな、と(おれが)気づくまでの流れ。こんな前日譚をもらった原作はいいな、と思う。ハロー神楽。

『Final Fantasy V』

FINAL FANTASY V - Google Play の Android アプリ

電車の中でにーちゃんがファイファンやってるのを見て、どうもやりたくなってしまったのでAndroid版を購入した。FF6はプレイ済みだったので、そのひとつ前のを。

ジョブがたくさんあったけど、なかなか自分の中でしっくりくる組み合わせが見つけられなくて、難儀した。ラスボスはすっぴん×2(二刀流・みだれうち、二刀流・白魔法)とものまねし×2(しょうかん・時魔法・白魔法、しょうかん・蘇生・アイテム)で臨んだ。何度か挑んでよく死んだので、ラストダンジョンでレベル上げ(AP稼ぎ)までしてしまった……。個別の攻略を見なかったので、ラスボスのほかに苦労したので記憶に残ってるはアトモスかな(いちいち回復してやってた)。

しかし若い時分にギルガメッシュだのエクスデスだの、名前だけ聞いていた面々に会えたので、けっこう楽しかった。ギルガメッシュはいいやつだったし、音楽もよかった。エクスデスがトゲに姿を変えて……って話に、センスオブファンタジーを感じた。最近の若いのはこういうのを知らないから困る、なんてな。

リシャルト・カプシチンスキ『黒檀』

サントル・ダキエルの欠点を挙げれば、シャワーの数の少ないことで、なんと十部屋にひとつの割合だ。おまけに、数少ないこのシャワーは、いつ見てもひとりのノルウェー人青年に占領されている。この男は、バマコがこんなに猛烈な暑さだとは知らずに来たという。アフリカ内陸部は、絶えざる灼熱の世界である。焼けつく光線に永遠にさらされる高原。太陽は地上すれすれまで迫る勢いだ。うかつにも日陰から一歩出れば、その場で全身が炎上する。暑さだけでなく、アフリカまで来たヨーロッパ人がへこたれるのには、もうひとつ、精神的な要素もある。彼らは、ここが地獄の底と知っている。海からも、気候温和な風土からも、遥かに遠い。この距離感、閉塞感、囚人となったかのごとき圧迫感。それがために、ヨーロッパ人の境遇はいっそう耐えがたいものとなる。ノルウェーの青年は、数日の滞在ですでに煮上がり、茹で上がって、青息吐息、すべてを投げ出して退散しようにも、帰りの航空便はすぐにはない。シャワーの下に居続けることで、かろうじて生き延びてるんだ、と彼は言う。

p.328

アフリカの人びとってどんなだろうか? 先入観で挙げるなら、のんびり屋、みんな仲良しの小集団、陽気で開放的なイメージ、こんなところかな。そしてそのような一面も確かにあって、この本にはそんなアフリカも描かれてはいる。けれどその反面、小さな氏族が多数ひしめきあっていることから来る閉鎖的で陰険な価値観、魔術へのおびえが生みだすどうしようもない暗さ、それから過酷な自然と悲惨な歴史、そういうものもあわせて具えている。『黒檀』はそういったアフリカの持つ点のどれが善く、悪いとか、我々はこれについて知るべきだとかいう押しつけがましい視点はなしに、それを一人の体験という視点から書いている。楽しい話も辛い話もまじえて、各地における短いエピソードがたくさん収録されている。少しずつ読んでいったらいいだろう(おれも途中でちょっと飽きて少し措いていたのだけれど、また読みはじめてみたらなんで飽きてたんだろう、と思うほど読めた。気分が変わったのか、内容が変わったのかは分からないが)。淡々とした印象があるのは漢語調だからだろうか。

巻頭に大陸の地図があるので、国名と照らしあわせながら読むといいだろう。おれはVimmerだからウガンダの位置は知ってたけどね(だいたい)。

いろいろ面白い話はあるのだけど、特にリベリアの話は酷くて、アメリカの解放奴隷(アメリコ・ライベリアン)がこの地に降ろされた結果、かれらが元々の住民と混じりあうことはなく(そりゃ当然だ)、かの地での経験と知識をもとに、同じ奴隷制をかれら自身で築きあげるっていう話。そのあとこの大統領を殺したサミュエル・ドウという軍人あがりの男が継ぐのだが愚かな政治がつづき、やはりろくな死にかたを死ない。大国も自国の利益にそぐわなければ手を差し延べることもない。

最後に、ヨーロッパとアフリカとの接触が悲劇なのは、「最初の接触が、ほとんどの場合、強奪者、略奪者、暴徒、犯罪人、奴隷商人といった、ろくでもない種類の人間によってなされたことによる(p.376)」という。一面にはそれもあるのだろうと思う。

黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)

黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)