高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

高校生のための現代思想ベーシック ちくま評論入門

ちくま評論入門 (高校生のための現代思想ベーシック)

ちくま評論入門 (高校生のための現代思想ベーシック)

『高校生のための—』三部作*1は世界を拡げるための手引き、人生のガイドブックであったが、これはむしろ現代社会を生きるための常識のための書だといっていい。簡単に言うと受験のための論説集で、つまりこういった考えを知っていること・理解できることを大学は高校生諸君に求めているのであり、いくらかはハイソでありたいと思う人間は当然触れているはずのことで、とはいえ面白く読んだ。しかし高校生は、西洋主義的な観点からの脱却だとか、消費社会だとか新しいコミュニケーションだとかの論を聞かされ、もちろん大人は彼らの生きている現代をより相対的な視点で見てほしいという気持ちがあるのには間違いないが、しかし大抵の人はそれと自覚できるだけの体験や内省をひとりでにできるようになる前に与えられてしまっているのではないだろうか。それはそれで認識にへんな歪みを起こしそうだなと思う。おれ自身もそういう教育を受けた人間のひとりではあるのだが。「中二病」という言葉を知ってしまった現中学二年生のことを憂うような気持ち。
収録された中では社会学的なもの、若林幹夫「『誰か』の欲望を模倣する」、萱野稔人「国家権力とはなにか」なんかに興味を持ったかな(ほかにもいろいろあります)。あと坂口安吾「美について」はたぶん一度読んだことあったのだけど、わかりやすいというか、しっくりくるというか。おれには合ってるのかもしれないなあ。

*1:なぜか読書にっきにエントリがなかった