高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

貫成人『哲学マップ』

哲学マップ (ちくま新書)

哲学マップ (ちくま新書)

その名の通り哲学(というか思想かね)というものの系譜を大きく俯瞰する本で、この本ならではの哲学的な、新しい話というのはほぼないと言っていい。長い歴史があるので新書一冊に詰め込むのは難儀な作業だったと思う、欠くわけにはいかない哲学者なんだろう人物の名前が挙げられてほんの少し触れられるだけ、というのがちょくちょくある。まさにマップ、またガイドマップであり、現代までの思想に興味をもったならば、まずは一読しておいて損はないはず。最後に読書案内がついてる。

たしか〈子ども〉のための哲学(この本でも紹介されているよ)にあったと思うのだけれど、哲学とは個々人の中で行われる本質的には一点ものの営みのことで、それが例えば文章に起こされるなどして他人に伝えられる形にされたのならそれは思想と呼ぶべきだが、とはいえ一人一人の思索は先人たちの築いてきた思想という巨人の肩に乗ってることは間違いない。おれたちが現代で暮らしているなか常識的に信じている理性やら自由やら平等やらといった観念だって歴史の積み重ねでいまこうしてここにあるわけで、歴史を知らずゼロから構築してみようとするのは無謀なはなしだ。

それにしても紹介される過去の思想は(おれたちの哲学にも歴史的に組み込まれているからだろうが)それほど苦労なく理解できる、と思うのだが、現代に近づくほどさまざまな思想や論者が出てきてめまいがするが、これはまだ時間が経っておらず淘汰されていないからなのだろうか? それとも最新の思想というのはつねにその時代の一般人には理解しがたいものなのだろうか? それとも哲学という分野が尖鋭化しすぎた産物なのだろうか?(最後のはないと思うけど)ということも気になる。