高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

ファインマン『物理法則はいかにして発見されたか』

物理法則はいかにして発見されたか (岩波現代文庫―学術)

物理法則はいかにして発見されたか (岩波現代文庫―学術)

シュレディンガー先生による講演ふたつ。古本屋で見かけて購入した。物理を専門としない一般聴衆向けとあるけど、ある程度知ってないと感覚をつかむのは難しいだろう(自分が中途半端にしか理解できなかったからこういうことを書くわけだが)。

物理法則の発見というものの一般の法則などがあるわけでは当然なく、前半に載る講演では物理学の主要な諸法則それぞれの平易な解説がなされ、後半はシュレディンガー本人の業績が産み出されるまでの紆余曲折が語られている。教科書でない語りというのは、客観的な事実に加えて語る当人の理解、その人の見る世界というのが入り混じってくるため、親しみやすく、理解の助けになるように思う。

おもしろかったのが、物理法則は数学的に等価ないくつもの形式で書き下すことができるけれど、それぞれの形が人間の心理に投影するイメージというのはたいへん違っている、という話。そして、ひとつの形に固執することなく複数の表現を知っていることが新たなアイデアにつながるのだ。

終わり間近に、シュレディンガーはニュートン、マクスウェル、それから相対性理論量子力学の発見を挙げて、「物理学においては、歴史は繰り返さない。」(p. 251)と言う。それぞれがまったく違った形で発見されたのであって、また、過去のそれらの発見につながった方法はすでに適用が試みられていながら、大きな前進にもつながってはいないので、次の大きな一歩にはこれまでに試されなかった方法こそが必要なのだという。それこそパラダイムシフトだ。ニュートンのころは実験と理論が密接だったけれど、今は数式を弄くることがメインなんだろうか? 庶民にとっては不遇な時代だ。