高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

光と物質のふしぎな理論—私の量子電磁力学

光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学 (岩波現代文庫)

光と物質のふしぎな理論―私の量子電磁力学 (岩波現代文庫)

量子電磁力学なる学問について一般向けにできるだけ平易に解説をこころみたもの(何かの講演がもとになっているらしい)で、もともと直感的に理解できる分野ではないので不可思議なルールの説明をされているようにしか思えないのは仕方ない。この量子電磁力学ってやつでは原子核の崩壊と重力以外の物理はすべて説明できるらしい。スゲェ! で、中では奇妙なルールに基づいて光の現象が説明される。そのひとつが(細かい言いまわしは忘れたんだけど)回転する矢印で、光子のひとつひとつがこのベクトルを回転させながら目に向かって進む。あ、なるほど、これは波の性質を意味しているんだな、と気づいてようやく光が波の性質をもつということが腑に落ちた(気がする)。通俗書の雑な図解に混乱させられていたのかもしれないが光子が直接振動しているわけではなくて振動する何かの状態を持っていてそれで強めあったり弱めあったりするということだ。あと光子は振動しながら飛ぶのではなく発射されたときの状態のまま進むらしい。じゃあ光源が振動しながら光子を飛ばすということだ。なので同時刻に目に入る光の位相(という呼び方が合ってるのか分からないけれど、つまりは回転するベクトルの角度)は、光子の通った経路で決まる。つまり経路の長さと光が通った物質で決まる。で、ここからがポイントで、光は一本の線のように飛ぶわけじゃないんだよ! 鏡に入射した光が同じ角度で反射して目に届く、ふつう人間はそんな理解をしているけれど、量子電磁力学ではそうじゃない。光子のあらゆる経路を考えに入れて、どうやら波の振幅の二乗に比例するらしい確率を計算することで現象を説明しようとする。鏡の例であれば、鏡のどの点で反射した光子も平等に目に届くと考える。そして、各点で反射した光子それぞれのベクトルを足した結果が最終的に目に届く光の強さになる。広い鏡の各点について光子の進む経路の長さを考えてみると、端に行くにつれて長くなり、極小となるのは(見かけの)反射点なので、この点のまわりでは距離の変化率が小さくなる。見かけの反射点付近を通って届く光子たちは位相がほぼ同じなのに対して、同じ広さの範囲を取ってみても、反射点を離れたあたりでは位相がバラバラになってしまう。その結果、全てを足しあわせたベクトルには反射点付近を通る光子が大きく寄与し、反射点を離れた光子はほとんど寄与しない(打ち消しあう)。だから光は入射角と反射角が同じになる点で反射するように見えるのだ! 光が屈折のさい最短距離を進むように見えるのも、光が直進しているように見えることもこれで説明される。鏡を細い溝をたくさん作って、位相の打ち消しあいが起こらないようにしてやると、うまいこと光が反射するのだが、光子は色によってそのベクトルの回転するスピードが違うので、角度によって違った色が見えるようになる。これを回折格子といい、CD の裏側が虹色に見える原理だ。