高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

山の音

山の音 (新潮文庫)

山の音 (新潮文庫)

そもそもなぜこの読書記録をつけているのかというと、理由のひとつには、おれは物事を面白おかしく紹介する能力に欠けているよな、という思いがあったのだ、ということを思いだしたか思いつくかして、うまいこと本の面白さを明瞭な言葉に落としこもう、と気をつけているのだけど、うーん。ちなみにこれは日本の文学を読もう企画の一環で、川端康成は初めて。孫もいるような歳の爺さんが、息子の嫁を気にかけ、美しいと思ったり、淫夢をみたりしながら、暮らし、結婚に問題があり、嫁いだ先から帰ってきた娘とか、妻がいるというのに女遊びをしている息子とか、そういう問題を明に解決するでもなく、鳶が鳴いただの、松の木が立ってるだのといいながら暮らしてゆく。長年連れ添った妻は別として、血がつながっていないからこそ嫁に情愛を感じるのだろうけど、それにしてもこの戦場帰りの息子の気持ちというのはほとんど斟酌されなくて、その爺さんにも、読者にとっても、ずっと他者のままで映るばかりだった。しかし結局のところ時代が違うからなのかこの爺さんも何を考えてるのかよく分からんので、知らない人種同士の会話をずっと眺めているみたいになったのは、面白かった。最初、新聞の連載小説みたいだなと思って、あまり好きではないので嫌な予感だったのだけど、あちこちの雑誌に点々と掲載されたものらしかった。