ガストン・ルルー『黄色い部屋の謎』
- 作者: ガストンルルー
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2012/01/01
- メディア: Kindle版
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《およそ知覚によってつかめるものなんぞ証拠にゃなりえないんだ……》ぼくも《知覚しうる痕跡》の上にかがみこんだがね、しかしそれはただ、ぼくの理性が描いた円の中へそれがちゃんとはいるようにするためだったんだ。その円は実に狭かったこともある、それこそ非常に狭かったことも……。しかし、いかに狭いとはいえ、やはり広大だった。《その理由は、この円はただ真実のみを入れていたからだ!》……。
前からウィッシュリストに入っていた『黄色い部屋はいかに改装されたか?』は絶版で、増補版が出ているので読もう、と思ったのだけれど、その前におそらく書名の元になっているのだろうこの本がKindleで出ているのを目にして、買った。黄色い部屋がいったい改装されたかどうかは分からないが(これを書いている時点でまだ結末まで読みきっていないので、本当に知らない)。
で読んだらとても面白かった。トリック自体はつまらないと思ってしまったけれど、ストーリーの展開とか、登場人物とかに、古めかしさを感じさせるようなところはない。密室殺人、消える犯人などと、あっと驚かせるような事件が次々に起こり、飽きさせないし、探偵もときどき謎めいたことをワトソン役にほのめかしてドキドキさせる。探偵役は主人公として読者が全幅の信頼をおける、という意味でまるで正義の味方みたいで、楽しめた。