高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

脳からみた心

脳からみた心 (角川ソフィア文庫)

脳からみた心 (角川ソフィア文庫)

かなり面白かった。心ってのは感情にまつわるあの心ではなくて、認識のというか、精神のというか、脳というハードウェアで実行されるあのソフトウェアのことを指す。この人は医者なんだが、登場する患者はじつにAさんからZさんまでいるんだぜ! 彼らの症例はさまざまであるがそれらを詳しく見ることで、健常なら当然ある機能がどんな風に欠けているか(または過剰にはたらくか)、逆に何は正常に機能しているのかを見ることで、一見モノリシックに思える心のはたらきを分解し、そうして言葉や記憶や知覚というものがどんな風に取り扱われているのかの説明をつけていく。

巷でよく見る右脳左脳の分断された人のように鮮烈な実験はなくて(いや、この本にも出てくるのだけれど、申し訳程度にという風に感じる)、出てくるのは物の名前が思い出せなかったり、記憶の順序が混乱していたりと地味な(失礼、)例ばかりで、こんな症例があっておもしろい! という感想は書けないが、おもしろいのは各個の症例それぞれではなくて、それらを元に心の機能を推定していくその過程だ。著者は奇をてらうようなことはせず、あくまで実直にそれを解いていく。推定とはいっても各種論文を引きながらの話なので、変なことは言ってないはずだ、たぶん……。