銃・病原菌・鉄
- 作者: ジャレドダイアモンド
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2013/07/12
- メディア: Kindle版
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銃・病原菌・夏。前から読みたいなーと思っていて Kindle 版を待ってたやつ。あんまり関係ないけどこれの著者が参加してる『知の逆転』て本を買った(まだ読み終わってない)らこれ系の、なんだろ、文化人類学? 的な本が大量におすすめされて辟易したのでホントは興味ないんじゃないかという気がした。
この本ではなぜ今日の世界の趨勢はこうなったのか? つまり、ヨーロッパが勢力を持ちアフリカやオセアニアは後進国とされているような風に、という疑問に対して、人類の起源からの足跡をたどりながら答えを求めてゆく。その動機には「白人がもともとすぐれた民族であったから世界の趨勢を担っているのだ」という類の、なんだろ、民族優越主義的な主張を否定するというところにもあるらしい。
で現実の世界がこうなっている最大の理由は人々の住んでいた場所が野生種の栽培化・家畜化に適していたかどうかで決まる。これができるようになると、
- 食糧の生産以外のことに従事できる人が増え、社会の構造が集約化する。これによって、いわゆる文明の発展が望める。道具を作ることだとか、強力なリーダーが置かれることなど。
- 家畜由来の病原菌が社会にはびこり、やがて人々が免疫を獲得することが、他の、免疫を持たない民族と衝突した際に有利に働く。ちなみに病原菌は感染する人間がある程度の数で密集していないと滅んでしまうので、社会の規模も求められる。
栽培化や家畜化が行われるどうかを決める要因にはいろいろあるが、栽培化・家畜化可能な野生種に豊富なこと、狩猟採集するよりも栽培家畜化するほうにメリットがあると考えられたことのほかに、栽培化の技術が外部から伝わりやすいことがあげられている。これには当然地理的に人の移動がしやすいということもあるが、天候の関係で東西方向に栽培化の技術が伝わりやすいことが重要だ。
野生種の栽培化の話で、当時の人々が品種改良ということを意識して行っていたとは考えづらいが、人間に収穫しやすい種子や果実(種が飛び散らないとか)を収穫しているうちに自然と品種改良がなされていったのだろうと考えられていて、いわば人工的な自然淘汰となっているのは面白いと思った。
最後の方はちょっと細かい話になってたので飛ばしたんだけど、中国はかなり早いうちから他の地域よりも先の段階を経験していたのに、なぜヨーロッパ人が覇権を握ったのか? という考察が面白かった。いわく、中国でも海外遠征は行っていたのだけれど、権力争いのごたごたに巻き込まれて、廃止されてしまったらしい。また、焚書なんかを見ても分かるようにその時々の強力な権力者の裁量長期的にはで大きな損失となるようなことも行われた。そういうことをしていても維持できるくらいには大国だったわけだ。一方のヨーロッパでは諸国がひしめきあってしのぎを削り、ヨーロッパ全体として見れば、どこかしらの国は進取の策を採ったし、互いに競争状態であったこともよく働いたということらしい。ひとつの社会の中に様々な役割をもつ人間がいたことが社会の成長につながったように、社会の集団が多様性をもっていることも勢力を拡大させる。
しかしなんで人は征服をしたがるんだろうね。男の人ってみんなこうなの?