夜の果てへの旅
- 作者: セリーヌ,Louis‐Ferdinand C´eline,生田耕作
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/12
- メディア: 文庫
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- 作者: セリーヌ,Louis‐Ferdinand C´eline,生田耕作
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2003/12
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アマゾンから時々おすすめされていた、このいかしたタイトルの本!
灰緑色の長い一筋の帯が遠くのほうで、暗闇の中に、早くも街はずれの丘の頂を際立たせていた。《夜明け》だ! また一日増えたのだ! また一日減ったのだ! ほかの日と同じように、またこいつをくぐり抜けることに苦労しなきゃならない、ますます狭まっていく環金みたいな、弾道と機関銃の炸裂で満たされた毎日。
しばらくして僕はもう一度陸地を見いだした。そして木立の下にいっそう深い夜を、さらに夜の背後に不気味な沈黙を。
患者が来ないとなると、ガレンヌ=ランシイほど悲惨なところはないことに、気づきだした。まったくのはなし。こういう場所ではものを考えることはまちがいなのだ、だのに僕は静かにものを考えにここへやって来たようなものだ。しかもわざわざ地球の向こう端から! うまくしたものだ。思いあがった罰だ! そいつは陰気に重苦しく僕の上にのしかかるのだった。笑いごとじゃない、それにそいつはもう僕から離れなかった。脳みそというやつは、とほうもない暴君だ。
戦争からはじまってそれから延々続く遍歴、この世と人間への恨みつらみの歌! 読んでいて気づいたのは主人公と世界の境界が読んでいてわからない、自分の嫌うその世界と主人公は混じってしまっている。けどそれは瑕疵じゃない、それは世の中を嫌うことでアイデンティティを成立させているということなのかもしれない、そういう点では自分の身に覚えがないわけではない……。何かへの反動としての自身というあり方については。おれについてはそんなかっこいいものではないけどさ。