高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

一千一秒物語

一千一秒物語 (新潮文庫)

一千一秒物語 (新潮文庫)

初夏近い晩は、もうすっかりその気分でした。坂を下ってきた私の背には汗が覚えられ、窓から見える商店の飾窓の前には、未来派の絵のように交錯している人影がありました。

——『天体嗜好症』

『高校生のための』三部作に掲載されていた掌編がよくて読んでみたかったやつ。他にもいろいろ入ってる。その掌編を含む表題作は天体と金属感覚と突き落とされるイメージばかりからなる掌編で一度に読むにはきついがおもしろい。童話調の話はあんまりおもしろくなかったが哲学的、随想的、自伝的な話は、非常に面白いと思った。意味が分からずとも流れるように読める文章が好きだと思う。

正直後半のところはほとんど意味が分からないんだが文章を読んでるだけでも、詩的であって感じるところがあるように思う。難解な言葉を用いてひけらかしたり煙に巻いたりするようではなく、ただ心に考えたままにそう書くしかなかったように書かれているみたいな気がする。バックグラウンドの知識を手に入れてからもう一度読んでみたい。