高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

異邦人

異邦人 (新潮文庫)

異邦人 (新潮文庫)

この手の有名な古典はブックオフの100円コーナーで見かけるたびに「読んでおかなくちゃな」と思って手に取るんだけど前に買ったことを忘れているので本棚にだぶっていくというわけ。いい加減まずそうなので読んだ。
感情や行動が淡々と綴られてる印象の前半はわりと退屈だったけど投獄されてのちは何かしらの人格とか思索を感じる。支離滅裂ではないはずだが理解されない人間の心の内。おもしろかった。

そんなときに、私はママンから聞いた父のはなしを思い出した。父は、私の記憶にはない。父について私が正確に知っていたことといっては、恐らく、ママンがそのとき話してくれたことだけだろう。父はある人殺しの死刑執行を見に行ったのだ。それを見にゆくと考えただけで、父は病気になった。それでも父は見にゆき、帰って来ると、朝のうちは吐きに吐いたのだ。それを聞くと、私は少し父がいやになった。しかし、今となると、それがごく当たり前だということが、わかった。死刑執行より重大なものはない、ある意味では、それは人間にとって真に興味ある唯一のことなのだ、——そんなことがどうしてこれまでわからなかったのだろう! いつか刑務所を出たとしたら、私はありとある死刑執行を見にゆこう。いや、こうした可能性を考えるのは、間違いだったと思う。というのは、ある朝早く、警戒線のうしろに、いわば向こう側に私が自由な姿をあらわすことを考え、見に行ったそのあとで吐いたりするかも知れぬ一人の見物人になることを考えると、押し殺されていた喜悦の波が、胸にのぼって来たからだ。しかし、これは道理にあわなかった。こうした仮定に身を任せたりするのは間違いだった。なぜなら、そのすぐあとで、恐ろしく寒気がして、私は毛布の下に体をちぢめていたのだから、堪えようがなくて、私はカチカチ歯を鳴らしていた。

1942年。フランスとか死刑とか言うと『死刑囚最後の日』(1829年)を思い出すな。