高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

山の上の交響楽

山の上の交響楽

山の上の交響楽

表題作の「山の上の交響楽」を読むために買ったのだが、最高によかったので満足。これが星雲賞だというので SF かなと思ってんだが、どの話も SF というよりは奇想。そういえば『幻想文学講義』(読んでる途中なので感想はまだない)にも何度も名前が出てきた。

「山の上の交響楽」は、演奏しきるのに数百年かかると言われているある交響楽の、演奏中の一幕を描いた作品で、どんな話だよ! と、わくわくさせられるよなー。すでにこの演奏が始まった頃のことを知っている人はみな死んでいるような状況で、コーディネーターが駆けずり回って、難所を越えようとする。その話の中で演奏が完結を見るとか、そういうことはなくて、物語の舞台のスケールは設定に似合わず小さく、演奏をめぐる群像劇が、登場人物たちの実時間で進んでゆく。

この話に限らずだけど、キャラクターたちはみんな人がいいというか、根っからの悪人はおらず、作者の人間愛を感じる。