死刑囚最後の日
- 作者: ヴィクトル・ユーゴー,豊島与志雄
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1982/06/16
- メディア: 文庫
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小分けにされた章は、長かったり短かったりバラバラで、不安げに、死刑に臨むまでのことを書いている。最後に待ちうけるギロチンのほかには事件らしい事件もなく、死刑囚は勇ましくもなくて、静かに集中して読んだ。
後半にはこの小説の序文があって、ここで死刑反対が語られて、その口調が熱いので俺でも何か思わなけりゃいけないような気分になる。
けれども、社会は復讐しなければならない。社会は罰しなければならない、と次に彼らは言う。——しかし、どちらもそうではない。復讐は個人のことであり、罰は神のことである。
社会は両者の中間にある。……
最後の部分:
……キリストの穏和な掟は、ついに法典にもはいりこみ、法典を貫いて光り輝くだろう。罪悪は一つの病気と見られるだろう。そしてその病気には、医者があって裁判官のかわりとなり、病院があって徒刑場のかわりとなるだろう。自由と健康とは相似たものとなるだろう。鉄と火とが当てられたところに香料と油とが塗られるだろう。憤怒をもって処置されたその病苦は慈愛をもって処置されるだろう。それは単純に崇高なことだろう。磔刑台のかわりに据えられた十字架。それだけのことである。
おれはキリスト教徒ではないがモラルの具体的な象徴があるのはいいよね。
1829 年。ちなみにフランスが死刑を廃止したのが 1981 年らしい。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%81%AB%E3%81%8A%E3%81%91%E3%82%8B%E6%AD%BB%E5%88%91)