高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

ケルベロス第五の首

ケルベロス第五の首 (未来の文学)

ケルベロス第五の首 (未来の文学)

これもよく分かんなかったなー!それがいいのだけど。地球からの入植地となった二重惑星を舞台とする連作中篇、もしくは三部構成の一つの本なのだが、この世界での大きな謎は、かつてこの星に棲息しており、自在に姿を変えることができるといわれている原住民の存在で、彼らは人間に滅ぼされたというものもいれば、逆に人間に取って代わり、人間の姿で今や生活しているのだろうともいわれている。もちろんその真実は明らかにはされず、読者はいろいろな描写を拾っては謎に思いを巡らすことになる。もちろん原住民が未だに生き延びていると考えるほうが面白い……。
最初の表題作はある少年時代の回想、これはまだ普通の話で読み易かったのだが、のこり二つは原住民に伝わる話らしきものを採取したもの、とその著者らしき博士のさまざまな記録をおざなりに読む(ので断片的にしか読者に伝わらない……)士官の話である。この博士は最初の話にも登場人物として出てくる。
信頼できない語り手たちによる、しんじつ何を描写しているのか判然としない物語で、だけれど確かに底では筋が通っているだろうと思える、ウルフ流の語り口っていうのはこのとき(長編としてはこれが処女作らしい)から十分に熟成されていたわけだ。

そして『鏡の中は日曜日』にはこの本へのオマージュが含まれていたらしい: 殊能先生による解説(のアーカイブ)