高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

世界制作の方法

世界制作の方法 (ちくま学芸文庫)

世界制作の方法 (ちくま学芸文庫)

名前の響きだけで買っただろ俺?はい。
読み終えたの先週くらい。
(たぶん)哲学の本だったんだけど、思ったより読みやすかった。だけどどちらかと言えばエッセイ風で、何かを明確に論じようとしているようではないみたいだ。
こういうものの翻訳って元になった英単語が書かれていないといまいち意図が汲み取れないよな、と不満に思いながら読んでいたら、最後に索引があった。まあそうだよな。

以下俺が理解したと思ったことを理解したと思ったように書く。

世界について

記述こそが世界であり、たとえば物理科学が対象としている(物質)世界だけが唯一の世界などではなく、それこそ芸術が、絵画や音楽がそれぞれの世界を描いている。この一つ一つをバージョンと呼んでいる。これらは互いに代替できるわけではなく、むしろそうでない場合のほうが多い。理解しやすい例として、物理学的な世界の記述の仕方にも座標系の取り方を考えれば任意のやり方があるわけだが……

私が世界について尋ねるなら、あなたは、ある座標系のもとでは世界はこうであるとか、また別の座標系のもとではこうなっているとか、私に説明してくれるだろう。しかしもし私が、あらゆる座標系から離れて世界はどのようかを語ってもらいていと迫ったら、あなたは何と言えるだろうか。

p.20

座標系を変えることは世界の記述の仕方をたしかに変えるけれど、それはあくまで座標系による世界の記述の範囲を離れていない。それに依らない世界の記述の方法はあるはずだし、それは当然互換性のないものであるということになる。そしてそれらがたしかに世界をあらわしている以上、記述の方法それ自身が世界なのだといえる。
だから自然科学とは一つのバージョンを何人もの人間で作り上げているし、芸術作品というのは一人きりの手による世界が多数あるものだということになる。

見本について

洋服屋が見本に使う布切れは何を例示するのか。それはその形や寸法ではなくて、色や生地を指すだろう。つまり見本になったものはその特性の抽象になっている。そして同じ布切れが「洋服屋が見本に使う布切れ」の見本として示された場合には、その形や寸法をも例示することになる。ものが例示する対象はその環境や文脈に左右される。

石はそれが車道にあるあいだはふつう藝術作品ではないが、美術館に展示される場合には藝術作品になりうるのだ。車道では、石はふつう記号機能をなにも果たさない。ところが美術館では、石はその特性——たとえば形、色、肌理——のあるものを例示する。

p.129

外延

これはこの本のトピックというわけではなく一般的な用語だが外延とは内包に対応する語で記号が指す意味のことを言うものらしい。対して内包とはそのものが内に持つ性質のこと。この外延して指すものというのは同じ記号でも異なることがあって、鳥の写真も、百科事典に載っているならばその種類の鳥一般を指すが、鳥籠に貼ってあればその一羽だけを指すだろう。こんな例でいいかな。


ほかにも真理とか正しさとか、藝術の様式だとかいろいろな話があって正直理解できてないところがたくさんある。もちろん、諸々の背景知識が必要なんだろう。