高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

巨匠とマルガリータ

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

巨匠とマルガリータ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-5)

「そんなはずはない。原稿は燃えないものなのです」

んんーおもしろかった。全部で32章あるうち13章のタイトルがようやく「主人公の登場」である。では最初は何なのかというと悪魔が登場する。悪魔がモスクワの街でめちゃくちゃしまくる。人が死んだり精神病院に送られたり、ひどいようだが、しかしこれがなんだか可笑しい。今見てみると600ページ近くと分厚いけれど話のだるさのようなものは感じなかった。
しかしこういった作品を読むとき、その作品の社会的背景を知っておく必要はやはりあると思う。もちろん殆どのよい作品というのはそういったものに縛られないものなのだろうけど、それでもなお背景というのは必ず存在するから。特に現代日本にいると資本主義・民主主義という枠組みは何となく分かっているが、ロシアのような社会主義(かな……この言葉すら分からない)国家を当時包んでいた雰囲気というものは意識的に知っておいたほうがより楽しいだろう。それは著者の来歴についても一緒で、まあ興味出ない作家というのも多いがこの人に関しては当局の圧力によりそもそもこの本の出版自体が叶わなかった、ということは先に知っておいてもよいことだったのかもしれない。

"Sympathy for the Devil" はこの本に着想を得ているそうだ: