高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』

年の終わりと新年一発目だけはなんとなくこれと決めて読むものだ。

心理学者がナチの強制収容所に送られたときの、その体験と記録を本にしたもの。細かい章に分かれたエピソードたちはなにかストーリーを描くわけではないけれど。悲惨さをまざまざと描くわけでもない。過酷な状況にあってもなお内面を深めることのできた人たちが一握りでもいたというのはほんの少し勇気づけられる話だ。おれはときどき自分がこのような状況、理不尽に肉体的に苦しめられるような状況におかれたらどうする/どうなるのだろうと想像をめぐらすことがあるけれど、とてもそんな風にはしていられないだろう。すぐ死ぬと思う。

またかなり以前、トルストイの『復活』という映画があったが、わたしたちはこれを見て、同じような感慨をもたなかっただろうか。じつに偉大な運命だ、じつに偉大な人間たちだ。だが、わたしたちのようなとるに足りない者に、こんな偉大な運命は巡ってこない、だからこんな偉大な人間になれる好機も訪れない。そして映画が終わると、近くの自販機スタンドに行って、サンドイッチとコーヒーをとって、今しがた束の間意識をよぎったあやしげな形而上的想念を忘れたのだ。

夜と霧 新版

夜と霧 新版