谷崎潤一郎『鍵・瘋癲老人日記』
こ、これが日本を代表する作家……。『春琴抄』がとてもよかったわけだけど期待に違わぬものであった。
鍵: エロオヤジが淫蕩な性質の妻に負けじと自分を嫉妬させるように仕向けて破滅していく様を描く日記。夫と妻との日記が交互に現れてミステリーのような趣もある。終わりがちょっと不気味。
瘋癲老人日記: 瘋癲老人ダイアリー。エロジジイが嫁にデレデレしながら死にかける日記。墓のアレンジの話なんかいっそ冒涜的である。
70歳とかそこらの時期の作品である。とくに瘋癲老人日記は口述筆記で書かせているので恐るべきじいさんだと言わねばならない。
年のいった男が性に溺れ破滅へと転がり落ちてゆき、対照的に女のしたたかさが明らかになる様、『カメラ・オブスクーラ』を思い出した。(余談だが『カメラ・オブスクーラ』は読んだ直後こそひどい話だという感想しかなかったが後々何度となくその風景が思い出されて不思議と印象に残っている。)しかしたぶん普遍的なテーマなんだろうなあこれ。
- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1968/10/29
- メディア: 文庫
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