高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

オラシオ・カステジャーノス・モヤ『無分別』

無分別 (エクス・リブリス)

無分別 (エクス・リブリス)

先住民に対する虐殺の生き残りたちの証言を校正する仕事につくことになった男が、その大量の証言たちから気に入った部分を詩のように自分の手帳に抜き書きし、読み返してみたり、独白のうちに勝手に思いだされたりする。括弧に入れられないゴシック体の引用が目を引いて美しい。

初めは主人公がこの証言たちの詩に呑み込まれ、やがて証言たちがその姿を読者の前に現してゆくのかな、などと勝手に思って読んでいたけれど、そうはならず、主人公はこの証言たちに魅せられてはいるものの、それはそれとして、少々滑稽に、女の尻を追いかけたり、性病や暗殺者の影におびえたりしている。詩に取り憑かれていながらそういう観念的なものから遠く離れた肉肉しさに苛まれている様子は一見おかしい。

しかしフィクションだからと思えばその酷さにも半目で読み続けられる、この本に登場する虐殺の数々というのは、解説によると、グアテマラの実際の虐殺とその証言を元にしてるのらしい。すげーな。人道的なことはさておいて、ラテンアメリカ文学って厳しい歴史から生まれたらしきものをよく見かけるよなー。

秋の夜長は読書とブログ ← 終わったキャンペーンに参加。あと今後は作者もタイトルに含めることにした。