日の名残り
- 作者: カズオイシグロ,Kazuo Ishiguro,土屋政雄
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2001/05
- メディア: 文庫
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何度か見かけたことがあって、タイトルもかっこよかったので久々のアマゾンで購入(積読無視)。
最初はその文化を愛するイギリス人のための小説だったかと思ったが、そうではない。老執事が休暇を取って旅行にゆき、道中、過去を振り返るという、いってしまえば回想するだけのストーリーなんだけど、これが何故だか面白くて、読みやすいし、一気に読んだ。折々に一人称で語られる主人公の過去のことが心を打つのは、一見淡々としたその語りに、過去を正当化するような響きがあるからだ。読みつづけるうち、読者は次第に、回想によって語られなかった過去を見いだすようになり、その語られなかったことが、そのことが語られなかったことこそがその過去において重要だったのだとわかる。
かくして回想は甘美である。それなら長生きをする甲斐もあるだろう、という気になる。俺は回想が好物なのだからな。