高校生のための読書ガイド

という名の、おれの読書感想にっき。小並感/ネタバレ有で

★★★★

貫成人『カント―わたしはなにを望みうるのか:批判哲学』

二冊は読むべきだな。やはり読みやすいと感じた。「入門・哲学者シリーズ」は内容も多すぎず平易に解説されてて、素人にはありがたいなあー。あとこのWordで描いたみたいな図もいい。 カントは有名な『~批判』の三書で、それぞれ真・善・美を説いた。わたし…

吉浦康裕『サカサマのパテマ』

どこかで予告編を見たのか、テレビCMをやってたのか。気にはなっていて、Google Playで名前を見かけたのをきっかけに観てみた。物語はシンプルで、二つの世界の男の子と女の子がであうボーイミーツガールであり、悪をくじき、世界を発見する冒険なのだけど、…

イサベル・アジェンデ『精霊たちの家』

祖母から孫娘にわたる女系三代の物語。なるほど『赤朽葉家』はこれに通じるところがあると言ってよいと思う。ともかく、まず目次を読むと、「美女ローサ」からはじまり「陰謀」「恐怖」「真実の時」……と後半に不穏な空気を抱えていることがわかる。といって…

石川文康『カント入門』

2014年に読んだ本。 世界は(時間的・空間的に)無限か有限か? という問題を取りあげてみる。具体的な議論は興味ないので省略するけど、決着がつかないのは想像すればわかると思う。実際のところ、世界は有限でも無限でもない。世界は空間や時間という尺度…

桜庭一樹『赤朽葉家の伝説』

ずっと前にKindleで買っていて、案外読むのに難儀したので、ときどき気が向いたときに読み進めてた。どこで知ったのか覚えてないが『百年の孤独』の近現代日本版じゃろ? との予断をもって読みはじめ、たしかにその趣があったけど、しかしときどき時代を語る…

ヴィクトール・E・フランクル『夜と霧』

年の終わりと新年一発目だけはなんとなくこれと決めて読むものだ。 心理学者がナチの強制収容所に送られたときの、その体験と記録を本にしたもの。細かい章に分かれたエピソードたちはなにかストーリーを描くわけではないけれど。悲惨さをまざまざと描くわけ…

レイモンド・チャンドラー『長いお別れ』

最近全然書いてなかったけど別に読んでなかったわけではないのだ。とりあえず下書きになってたやつを卸してくけど、年末までに読んだ分全部書き出せない気がする。 で、これ。満足感があった……。ハードボイルド。かっこいいかどうかは分からないけれど。ミス…

三島芳治『レストー夫人』

ひっっさしぶりに漫画でとてもよいと思えるものを読んだと思う。Kindle版が配信される前にこれは絶対いいと思って予約していたやつだが、案の定よかった。 なぜだかは語られないが高校二年生になるとそれぞれのクラスが『レストー夫人』なる劇を上演すること…

アントニオ・タブッキ『インド夜想曲』

タブッキは一冊しか読んだことがないのに夏のイメージが強く植えつけられているなと思った。前に読んだの(『供述によると……』)が実際夏であったし、冒頭の描写も夏だったから、それも不思議はないなと思う。レーベルも同じく白水Uだから、なおさらかな。 …

藤ます『Sweet Lip』

最近この日記を書いてなくて自分でも心配だし久しぶりに書くのがエロ本なのも心配だ。てか最近ゲーム映画エロ本となって脳のカルチャーが破壊されてるなあ……。 では早速レビュー!!!(そういうテンションではない) まず特筆すべきなのはタイトルどおりフ…

ディーン・パリソット(監督)『ギャラクシー・クエスト』

往年のスペースオペラテレビシリーズ「ギャラクシークエスト」(スタートレックをモデルにしてるとおぼしい)は放送終了後も一部に根強い人気をもち、何年も後になってのファンイベントも盛況なのらしかった。しかしその役者たちはファン(つうかオタクだ)…

竜太『ちちにくりん』

Kindleのおかげてエロ本もほんのちょっととはいえサンプルを読めるようになったことは嬉しい。提供されるのが冒頭部分なのでカラーパートとなってしまい大部分を占める白黒のクオリティ判定が微妙にやりづらいのは難点だけど。これは表紙がそんなに好みでは…

『喰霊-零-』

「喰霊-零-」 Blu-ray Special BOX出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2013/12/27メディア: Blu-rayこの商品を含むブログ (5件) を見る レンタルで。東京に住んでたころに一話を見たきりで、なんとなく気になってたのを思い出したので、少しずつ観てた。 あり…

『Final Fantasy V』

FINAL FANTASY V - Google Play の Android アプリ 電車の中でにーちゃんがファイファンやってるのを見て、どうもやりたくなってしまったのでAndroid版を購入した。FF6はプレイ済みだったので、そのひとつ前のを。 ジョブがたくさんあったけど、なかなか自分…

リシャルト・カプシチンスキ『黒檀』

サントル・ダキエルの欠点を挙げれば、シャワーの数の少ないことで、なんと十部屋にひとつの割合だ。おまけに、数少ないこのシャワーは、いつ見てもひとりのノルウェー人青年に占領されている。この男は、バマコがこんなに猛烈な暑さだとは知らずに来たとい…

古川日出男『アラビアの夜の種族』

"Arabian Nightbreeds"、無名の著者(有名ではないという意味ではなく、ノークレジット)による作で、それゆえ多くの翻訳者・編集者が自らの名前で好き勝手に改竄を施してきた物語の、日本語訳。だからこれは物語の物語だ。 ナポレオンの邪眼からエジプトを…

福島聡『星屑ニーナ』

3年後! 5年後! いやー、エピックだった! 作者はハチャメチャな漫画を目指したと書いていたけれどその試みは成功しているように思える。それも読者がついていかれないようなハチャメチャさではなく、ハチャメチャさを楽しみながら引っ張っていかれるような…

谷崎潤一郎『鍵・瘋癲老人日記』

こ、これが日本を代表する作家……。『春琴抄』がとてもよかったわけだけど期待に違わぬものであった。 鍵: エロオヤジが淫蕩な性質の妻に負けじと自分を嫉妬させるように仕向けて破滅していく様を描く日記。夫と妻との日記が交互に現れてミステリーのような趣…

ジーン・ウルフ『ピース』

ジーン・ウルフの新作! ではなくて1975年のもの……。ウルフってそんなに邦訳されてないらしく、また古いものしか邦訳されてないのだと調べてわかった。 ウルフの作品が何で好きなのかと言うとこの嘘にからめとられるような感じ、技巧上のものじゃなくて語り…

渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ』

自立生活を志向する筋ジストロフィー患者と、その介助をおこなうたくさんのボランティアたちの話。ルポルタージュだね。最近はノンフィクションと言うらしい。Amazonのアカウントを取ってほぼはじめにウィッシュリストに入れた本で、ようやく掘り返してきた…

ロバート・クーヴァー『ユニヴァーサル野球協会』

ユニヴァーサル野球協会 (白水Uブックス)作者: ロバートクーヴァー,越川芳明出版社/メーカー: 白水社発売日: 2014/01/18メディア: 新書この商品を含むブログ (4件) を見る 存在しない野球リーグの話だけで一冊持たせてるのだ、熱いな、と思って手にとって(…

貫成人『哲学マップ』

哲学マップ (ちくま新書)作者: 貫成人出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2004/07/06メディア: 新書購入: 3人 クリック: 47回この商品を含むブログ (46件) を見る その名の通り哲学(というか思想かね)というものの系譜を大きく俯瞰する本で、この本ならでは…

佐藤友哉『フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人』

フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人 (講談社ノベルス)作者: 佐藤友哉出版社/メーカー: 講談社発売日: 2001/07/06メディア: 新書購入: 1人 クリック: 93回この商品を含むブログ (182件) を見る 佐藤友哉といえば一部の界隈(その実体は不明だが)では強い…

小林泰三・林譲治・山本弘 『超時間の闇』

超時間の闇 (The Cthulhu Mythos Files)作者: 山本弘,小林泰三,林譲治,小島文美,金魚の夢,小澤麻美出版社/メーカー: 創土社発売日: 2013/11/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る クトゥルー・ミュトス・ファイルズというアンソロジーシリー…

石川博品『後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール』

後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール (集英社スーパーダッシュ文庫)作者: 石川博品,wingheart出版社/メーカー: 集英社発売日: 2013/12/25メディア: 文庫この商品を含むブログ (11件) を見る これは本当は去年のうちに読んだやつ。こういうのがたくさん…

ファインマン『物理法則はいかにして発見されたか』

物理法則はいかにして発見されたか (岩波現代文庫―学術)作者: R.P.ファインマン,江沢洋出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2001/03/16メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 49回この商品を含むブログ (32件) を見る シュレディンガー先生による講演ふたつ。古本…

谷甲州『星を創る者たち』

星を創る者たち (NOVAコレクション)作者: 谷甲州出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2013/09/26メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログ (4件) を見る 太陽系の惑星群を舞台にした、土木SF連作短編。技術者たちのストーリーであり、それぞ…

三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』 #1-4

ビブリア古書堂の事件手帖 ?栞子さんと奇妙な客人たち? (メディアワークス文庫)作者: 三上延出版社/メーカー: KADOKAWA / アスキー・メディアワークス発売日: 2013/02/25メディア: Kindle版購入: 1人 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る ビブリ…

庵野秀明・岡田斗司夫『トップをねらえ!』

トップをねらえ! Blu-ray Box出版社/メーカー: バンダイビジュアル発売日: 2012/02/24メディア: Blu-ray クリック: 21回この商品を含むブログ (16件) を見る 面白かった。はじめはロボットでスポ根っていう一発ネタなのかな? と思ったけどそれはあくまでネ…

レオ・ペルッツ『夜毎に石の橋の下で』

夜毎に石の橋の下で作者: レオ・ペルッツ,垂野創一郎出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 2012/07/25メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 222回この商品を含むブログ (36件) を見る 面白かった! 史実を下敷きにし、皇帝ルドルフ二世時代のプラハを幻想的に…